書評。米谷民明「光を止められるか」。失敗作の見本。読んで分からなくても心配しないでよい。

米谷民明「光を止められるか-アインシュタインが挑んだこと」岩波科学ライブラリー178、2011年。高校生向きと称する啓蒙書。しかし、失敗作の見本である。高校生よ、この本を読んで、内容が理解できなくても心配しなくて良い。書き手が悪いのである。世の中には説明下手な本がある、ということを知ってもらうことにこの本の価値があるのだから。

そもそも題名が間違っている。「光を止められるか」という字義通りのことがらは、ちっとも本書のテーマにもなっていない。「光を止める」ことと、「光の速度で移動する」ことの違いを著者は理解していないようだ。国語能力のない物理学者はいるのだ。

数式を使わない説明に努力しているようだが、そのために、内容がクドクド回り道をしていて、読んでいて著者の言いたいことがちっとも伝わってこない。音波形成の説明、すなわち、
「圧力の高い部分の分子が、全体として低い部分の分子を押して動きはじめる」((p.36)
などは、ウソに近い。
音波の説明は、まったく下手。こんなの読んでいては、知らない人はこんがらがるだけ。害をなしている。

光の速度がなぜ一定なのか、という本質的な問題にちっとも答えていない。現象論だけをうろうろしているだけで、本質への切込みがちっともない。

量子論や一般相対性理論への言及なぞせず、しっかり特殊相対論にしぼって、必要な数式を使って(高校生を馬鹿にするな!)、落ち着いて説明するべきだ。

米谷民明。本業でどんな仕事をしているか知らないが、本書だけは失敗作といえる。

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相対論の啓蒙書なら、内山龍雄「相対性理論入門」
電磁気の啓蒙書なら、本間三郎、山田作衛「電気の謎をさぐる」
と岩波新書に良い本がある。


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