書評。「シュッツ相対論入門第2版」。加筆部分はまったく幾何学的でない。非加筆部分は良作。

「シュッツ相対論入門第2版」丸善、2010年を読む。大冊520ページ。重力波や宇宙論の部分を加筆改訂したという。しかし、これらの部分は、式も図も少なく、文章がだらだら書き連ねているだけで、説得力に欠ける。入門者にとっては、前半部が有用だから、新版を買う必要性はまったくない。改訂した意義を疑う。

確かに文献表などを見ると新しい文献が紹介されている。しかし、重力波が実際に発見されたわけではないし、1984年以来の宇宙論が、少なくとも本書のレベルでは、大きく変わったわけではない。その意味で、「入門」書としての改訂の意義は空回りlに終わった。

しかし、本書に特徴がないわけではない。Buchdahl の解の紹介とか、Hawking 過程について説明してある。Kruskal 座標についても言及がある。入門というより、中級・高級のレベルとなろう。しかし、Kerr の解についての記述は中途半端。もうすこし丁寧な突っ込んだ説明が欲しいところだ。Schwarzschild 時空については、入門としては、この程度で良いかもしれない。

このように理論的部分で何が書かれているかを考えると、本書の新しい部分が、「観測的宇宙論」に含まれていることが分かる。要するに、少なくとも入門レベルでは、最近の相対論の発展は、理論ではなく、観測なのだ。重力波の観測が世界中で競われている現状を見ても分かる。

本書の最大の特質は何か。やはり前半部の”幾何学的記述”だろう。微分幾何学で物理学を記述するという著者ならではの手法が前半部にキラキラをちりばめられている。双子のパラドックスに関する説明も良く出来ている。

確かに良い本ではある。しっかりした記述で十分に物理学を楽しめる。入門者なら分かるところだけでも読み、また後日読み直せばよい。練習問題はたくさんあるが、多くは意外なほどに易しい。やる気を起こさせる。著者の人柄が垣間見える。

結論:本書はたしかに入門として使える。いろいろ書かれているのでつまみ食いで読めばよい。


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