書評。杉原厚吉「エッシャー・マジック」。空間を幾何学で解析。でも、芸術は爆発、じゃなかったかな。

杉原厚吉「エッシャー・マジック だまし絵の世界を数理で読み解く」東京大学出版会、2011年。エッシャーの絵の数学者による解析。それなりにたのしいが、心を打つ芸術をこのように扱うと、ちょっとしらける。芸術は数学ではない、と叫びたくなる。

エッシャーが心を打つのはなぜか。意表を突く数学的なパラドックスだけではないはずだ。そこには既成概念にどっぷりつかった世界があり、その世界を冷静に見つめる第三者としての自分がある。世間に流されない、世界の外の存在としての自分が。それに共鳴・感動するのだ。

それを数学で表現・解析するにはどうするか。射影幾何学をつかうのだ。球を平面に射影すれば、無限遠点も有限な地点に変換できる。無限ではなく、有限な地点を基準とした射影でエッシャーの絵が描ける。

ああ、数学とは、ぶしつけにも、どやどやと、心の世界に踏み込んでくる。こころが裸にされる。

いやいや、われわれは、3次元世界を見ているのではなく、影絵を見ているのだ。幻灯機で障子に写された幻影の見ているに過ぎないのだ。この世は幻。人間の目は2次元世界にしか対応できないのだ。物理・生物学的に。目で見た幻影を、脳のなかで、勝手に、3次元に変換(創造)しているだけなのだ。

そう、この世はすべて、幻影。

そんなことを考えさせられる本。

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