GPS信号の特殊および一般相対論的補正について

GPSを勉強していると一般相対性理論が出てくる。たしかにカーナビの本にも、GPS信号には一般相対性理論が適用されていて、時計がそのようにあわされている、と書かれている。しかし数式で論じたものはあまり見かけない。そこで補正量がどのくらいになるのか、大雑把な数値を代入して、計算してみた。特殊および一般相対性理論適用の練習問題である。

1.地球を球対称と仮定すると、アインシュタインの重力理論の方程式の解としてSchwartzchild の解が適用できる。この解の線素metric は以下の式で表される。

     ds^2= (1-a/r)c^2・dt^2 - 1/(1-a/r)・dr^2 - r^2・(dθ^2 + sin^2θdφ^2)

ここに、a は Schwartzchild 半径であり、a=2GM/c^2 (G:万有引力定数、M:地球の質量、c:光の速度)。

いま、a/r<<1 だから、1/(1-a/r) = 1+a/r と近似できるので、線素は、

     ds^2 = (1-a/r)c^2・dt^2 -(1+a/r)dr^2 - r^2・(dθ^2 + sin^2θdφ^2)

となる。一方、GPS衛星の速度V はこの座標系で表すと、

     V^2 = ( dr^2 + r^2・(dθ^2 + sin^2θdφ^2) )/dt^2

なので、結局、線素は

     ds^2 = (1-a/r-V^2/c^2)・c^2・dt^2 -(a/r)・dr^2

したがって、衛星の固有時τと地上の時間t との間には、2次のオーダーの量を無視して、次の式となる。

     dt = ( 1 + a/(2・r) + V^2/(2・c^2) )・dτ

すなわち、
   (1) 一般相対論的補正:Δt/t)general= a/(2・r) = GM/(c^2・r)
   (2) 特殊相対論的補正:Δt/t )special= V^2/(2・c^2)
が得られる。

2.数値を入れてみよう。

     c = 3.00 x 10^8 (m/s)
     G = 6.67 x 10^(-11) (Nm^2/kg^2)
     r = 6.37 x 10^6 (m) (地球の半径とする。衛星の位置より重力が強い。)
     V = 3.8 x 10^3 (m/s) (衛星の速度)
を代入すると、
     Δt/t)general = 6.96 x 10^(-10)
     Δt/t )special = 8.03 x 10^(-11)
となる。
この時計の遅れを距離に換算する。1日が T=24x60x60=86400(s) であるので、
     ΔL)general = Δt/t)general ・ T・c
        = 6.96x10^(-10) x 86400 x (3x10^8)
        = 1.80 x 10^4 (m)
        = 18.0 (km)
同様に、
     ΔL)special = 2.08 (km)
となる。
一般相対論的補正の方が、特殊相対論的補正より one order おおきのが面白い。(ホントかな。どこか間違っていないかな。地上の重力を使ってよかったかな。)

3.特殊相対論による補正は、このように考えるとはやい。例のローレンツ収縮の式

     dτ = sqrt(1-V^2/c^2)dt

で、V<画像


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Schwartzchild は若くして死んだ。Einstein の追悼文を読むと、ほんとうに悲しくなる。


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上のSchwartzchild の解 (metric) は

画像

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