書評。トホーフト「サイエンス・ファクション」。常識を超えない保守的な本。副題は間違い。

ヘーラルト・トホーフト「サイエンス・ファクション:疑り深い科学者のための宇宙旅行入門」岩波書店、二宮正夫、二宮彰訳、2010年をよむ。常識人の現代地球環境に関するエッセイで、意外性、新規性のまったくない保守的な本。ノーベル物理学賞受賞者の面影はどこにもない。あまりに保守的な、と言ったところの本。

まず、訳者がつけた副題は本書の趣旨をまったく反映していない。本書は「宇宙旅行」などとはまったく無関係で、宇宙の中に地球を位置づけて、現代の地球環境を論じた本。したがって、地球温暖化の話もでてくるし、ロボットのはなし、そしてインターネットの予想以上の発展も、現代医学やDNAについての話も出てくる。訳者は原著者の本旨をまったく理解していないのだ。

本書には著者の独自性も新規性もまったくなく、あたらしい知識を得ようとして本書を手に取った人にとってはお金を無駄にしたように感じる。著者には自由な批判精神もないようだ。

コンピュータとインターネットの急激な発展についてトホーフトは何というか。ムーアの法則しか言及できない。なぜ、このような指数函数的な発展となったのか考察がまったくない。

地球温暖化についても巷で出回っているデータを再掲するばかり。一面的温暖化論者のデータを示すばかりでなく、過去に地球が暖かかったというデータも引っ張り出してくるが、それだからどうだというのか、という著者の主張がさっぱり出てこない。じぶんはこう考える、との主張がないのだ。自分で世界理解の体系を構築していないのだ。

それで比較すべきはRoger Penrose の「Emperor's New Mind だ。ペンローズはしっかり自分の考えを体系化し、それを一段づつ説明している。ペンローズが見る世界、がはっきり読者に分かる。トホーフトのこの本では、世界の端の素人が、インターネット情報を寄せ集めて切り貼りした本と変わりがない。ペンローズの偉大さを思い知らされる本だ。

158ページの本を18章に分けて記述している。それだけ各章の長さが短い。読みやすいが、上滑り。数式もなく、説明が定性的。これでは本格的な議論は出来ない。新規性もなく独自性もないので、この本はそのうち屑となって消える。2,450円の価値はない。岩波もひどい本を出したものだ。

科学者の専門業績が偉大であっても、まともな啓蒙書が書けない人がいる。この本がその典型。

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