書評。井ノ口順一「リカッチのひ・み・つ」。たのしい読み物。バイキング料理の味がする。

井ノ口順一「リカッチのひ・み・つ-解ける微分方程式の理由を探る」日本評論社、2010年を読む。楽しい読み物である。「高等学校で微分積分学を学んだ読者のため」も本というが、チト、それでは手ごわい。なにしろ、群論、射影幾何、行列の指数函数、ベクトル場、解析力学等々現代の数学のあらゆる分野の手法が出てくるのだ。広い知識をもった人には、あっちこっちのつまみ食いが出来たたのしいが、単語を聞いたこともない人にとっては、ジャングルを案内されるような不安感に襲われることだろう。要するに、バイキング料理で、和食も、洋食も、中華も出てくる雰囲気の本である。

数学書には目標がある。その目標のために、前半8割の記述をする。いわば、山登り。頂上に出たときに視界が開ける。本書の頂上での眺めは何か。それは、

1.リカッチ方程式は射影変換に不変性があると解ける。

であり、その前座として、

2.1階線形常微分方程式は1パラメータ変換群による不変性があると解ける。

そして、次回のおたのしみとして、

3.戸田格子、KdV 方程式

が待っていることになる。そう、非線型方程式とグラスマン多様体の世界への案内なのである(希望的観測!)。

本書には具体例がおおい。それだけ読者が鉛筆を動かす余地があるのだが、逆に言うと、すこしエレガンシーにかけることとなる。小冊子でこれだけたくさんの分野に言及するわけだから、なかなかエレガントにはかけない。饒舌に、言葉のノリにしたがって書くわけだ。それだけに欠点はおおいが、それには目をつむっておこう。

ともあれ、数学の広い世界を垣間見たい人と、バイキング料理が好きな人に、本書をすすめる。

画像


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井ノ口順一「曲線とソリトン」を読む。間口が広すぎて消化不良を起こす。
http://44579446.at.webry.info/201008/article_17.html

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