田中正「物理学と自然の哲学」を読む。ステレオタイプ思考を正す深い本。

田中正「物理学と自然の哲学」(自然と人間シリーズ)新日本出版社、1995年を読む。一読、当方の軽薄な西洋科学哲学理解を恥じ、もっと真面目に勉強しなくてはいけない、と反省する。根源的な本である。これを物理学者が書いた。驚嘆である。

「西欧文明すなわち「自然の征服・支配」といった一方的な単純な図式が成り立とうはずがなく、そこには、人間のたえまのない試行錯誤と苦闘の歴史があって、ルソーやエンゲルスの言説自体が西洋文明の貴重な遺産であることをみてとる必要があります。今日の「西欧文明批判」は、少なくとも、これらの遺産を超えるものであることが求められます。」(P.255)

巷では、デカルトに始まる西洋の「分析」と、東洋的な「総合」が、対比的に論じられている。しかし、デカルトをすこし深く読むと、ものごとはそんなに簡単ではない。デカルトは「分析」だけをしていたのではない。「世界」を理解するために、「思う我」は一度は分離するが、それがすべてではない。「世界」を理解するこtが究極の目的だから、ここで終わるわけではない。西洋哲学は、そんな中途半端なものではない。

"人間を世界の中心におくヨーロッパ思想の伝統の根本的破壊が必要である”
”東洋あるいは日本の文化は未来の文明に重要な示唆を与える”
との言明(梅原猛)の底の浅さを指摘している。そうだろう。表層的なステレオタイプ思考では西洋を理解したことにはならない。西洋、東洋の二元論は中学生でも出来る。デカルトをもっと深く読め、と著者はいっているのだ。

アインシュタインのラッセル批判もきちんとあぶり出している。ラッセルの「外部世界はいかに知られうるか」の誤謬を指摘している。読書の方も、二重、三重に勉強していかなくては、これらの議論にはなかなかついていけない。

ともあれ、なかなか著者の真意を理解するのが難しい本である。書かれたのがすこし古く、「ポストモダニズム」の位置づけが変わってきているが、西洋科学を「分析」とのみ考えている若輩者には勉強となった。

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