中西隆紀「日本の鉄道創世記」を読む。技術なし。歴史観なし。それでも技術の歴史か。

中西隆紀「日本の鉄道創世記-幕末明治の鉄道発展史」河出書房新社 2010年を読む。技術の歴史の本なのに、技術の話も、歴史哲学もない、いかにもジャーナリストが文字を連ねたただの本。こんな程度では、大学の卒業論文にもなりませんよ。

そもそも、一次史料に当たっていない。一般の著作や、いわゆる社史に類するものからの引用がほとんどを占める。したがって、本当に信用して良いものかどうか、迷う。歴史調査の基本がこのジャーナリストには分かっていないようだ。現場に自分が居合わせる現代史ではないのだ。ちゃんとした一次史料にあたり、その「ウラ」をとって、多重的に事実を明らかにしなくては歴史の本にはならない。

また、技術の本にもなっていない。そもそも、技術論議がこの本には一つもないのだ。狭軌、広軌のはなしが唯一出てくるが、小学生向きの長さだけ。レールの断面形状についても2枚の図を示すだけで、技術内容はない。トンネル内の煙の排除についても技術がない。こんなほんはとても技術史とはいえない。

鉄道史で重要なのは路線図。この本に出てくる地図は出所が不明。多分、著者自らが書いているのだろうが、これでは歴史記述にはならない。不要な情報ばかり記入されていて、読みにくい。もっと現物の地図を探してきて、それをのせるべきだ。地図ならいくらでもある。不勉強だ。

時刻表も一枚ものっていない。時刻表こそ鉄道運用のエッセンス。それに目が行かないとは、著者の不行き届きもはなはだしい。

写真も出所不明。いつの写真か、しっかり説明しなくては歴史記述にならない。

そして、本書の最大の欠点は、著者が歴史哲学(歴史観)を持っていないこと。何のために鉄道の歴史を書くのか、問題意識がまったく感じられない。問題意識がないから、焦点が定まらず、歴史事象にたいする評価ができない。中学生の夏休み研究じゃないのだから、しっかりとした問題意識を持ち、筋を通して、なにを書きたいのか自問自答して、新しい独自な光を当てていくことが歴史記述。

著者が、単なるジャーナリストの記事屋から、歴史家、技術史家に成長することを願う。


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