平川秀幸「科学は誰のものか」を読む。高校生向きの科学技術ガバナンス論の入門書。

平川秀幸「科学は誰のものか-社会の側から問い直す」NHK出版生活人新書、2010年を読む。素直な高校生向けに書かれた科学技術社会論の入門書である。

一般に科学哲学の本は、その深い歴史と蓄積の上にたち、さらに隣接分野からの刺激もあって、論点が広範囲にわたり、そして論議が深く、論理的である。それを考えると、本書は、大学生の卒業論文(またはゼミの発表)のレベルである。こんな文章を書いていては指導教官から叱責を受けて、大学の卒業がおぼつかなくなる。その程度の本である。

なにがレベルを低くしているか。前提とする「既存概念」を simple minded な人間と仮定しているからだ。「科学は完全無欠だ」、「科学は価値中立的だ」、「悪いのは科学ではなく、その使用法だ」という言説を前提として、平川は自説を展開している。わたしが、高校生向きの本だ、という所以だ。

科学の非政治性を信じている人など、とっくに、ひとりもいない。科学は権力の矛となり、人民を殺戮してきた。これは原爆で始まったことではない。古代からの戦争技術を考えればすぐに分かる。

本書の記述レベルは低いが、それだけ読者のレベルが下がったのかもしれない。(老人にとっては本書の知識は常識だが、若者にとって、本書で書かれている事実は初耳なのかもしれない。)

本書の良いところも指摘しなくてはいけない。第7章「知を力にするために」で一般人の行動指針が示されていること。久しぶりで、「市民よ!行動を起こせ!」とのスローガンを聞いた。それも「楽しく」と来た。楽しい人である。

レベルの低い本であるが、最低限このレベルが維持・共有できることを望む。

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