衛星「みちびき」の誤解。3機ではダメ。GPSシステムをしっかり勉強しよう。

「みちびき」は日本版GPSシステムのさきがけであり、将来、「3機体制」で運用するのが現案である。しかし、これでは日本独自の測地システムを作ることにはならない。誤解しないように、確認しておこう。

1.3機の衛星では、測地はできない。最低でも4機要る。衛星からの電波で受信地の座標を計算するのだが、時刻も未知数に入っているから、座標の3点に加えて、未知数は四つ。したがって、方程式も四つ必要で、人工衛星が四つ必要。人工衛星が三つでは方程式は解けない。

2.時刻が未知数になっていることをしっかり理解しよう。距離の計測は光の速さに時間をかけて計算する。そのとき、時間を正確に知ることが必要である。衛星には原子時計が積んであり、正確な時刻を刻むことができる。しかし、地上の時計は、水晶時計程度で精度が極めて悪く使いものにならない。同期も取れていない。だから、衛星の時計を使い、受信時刻を未知数として取り扱う。

3.衛星の原子時計にも誤差が生じる。この誤差情報は、米国の地上局から衛星におくられ、この情報が衛星からの電波に乗せられてくる。受信時にこの情報をもとに、補正する。時刻同期には一元管理が必要だ。

したがって、「有事のとき、米国がGPSを他国に使わせないようにする事の対抗策として、日本版GPSシステムを、3機の衛星で構築する」という言明は誤りである。

*************
2010年9月30日追記
「3機体制」の趣旨は、「常に見える」ということのようです。しかし、
1.常に、米国のGPSより仰角が大きい、というわけではありません。QZSSとGPSを比較して、より仰角の大きい方向に衛星が位置するときの時間配分はどの程度なのでしょうか。
2.測地するには、4機以上の衛星が必要です。所詮は米国GPSは不可欠です。
3.測地の誤差を考えると、「仰角の小さい衛星の誤差が全体の誤差を支配する」としたら、天頂衛星を打ち上げても問題の解決にはなりません。QZSSの方が仰角が小さいときにはどうするのでしょうか。


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この記事へのコメント

MAJIM
2010年09月28日 21:31
初めまして。

ご存知の様に,GPSは受信機側から何基の人工衛星が見えているかが重要です。現在は日本の上空に衛星がいない時間帯が生じますので,1基でも2基でも打ち上げてもらうと,補完的な意味は持ち得ます。

独自に運用するのには何基必要かということですが,4個目の変数は受信機側の時計の時刻の誤差です。この誤差に光速度を掛け合わせた量が距離の補正に用いられます。

したがって,もし,政府機関が受信機側に原子時計を用いるならば,GPSの発信機側は原子時計を利用しているため,その精度内では受信機側の時刻の誤差は無意味となるため,零とみなされ,原理的には3次元即位法で3基の衛星で足りることになります。

勿論,カーナビゲーションシステムの様にクォーツ時計程度では,時刻の誤差が大きく無視できないため,仰る通り最低4基は必要です。

何れの場合も相対性理論による時間の遅れに関する理論的な補正は必要ですが。

なお,全ての物理計測には誤差が伴いますので,最小限の衛星数ではなかなか精度が出ないようです。以前,JPCATSという学会でGPSによる計測を研究されている方の発表を聴きましたが,見えている衛星数が少ない場合には大変苦労されているようです。

経済的に余裕のある国であれば,近場をカバーするだけでも最低12基位は打ち上げたいところでしょうね。
2010年09月29日 08:53
MAJIM さま、

コメントありがとうございます。小生も本件の専門家ではなく、また、最近勉強し始めたばかりなので、貴ご意見いろいろと参考になります。

1.現在、米国のGPS衛星は30個ぐらいが飛んでいる(正常に作動している)のでしょうか。ですから、たった一時でも、日本から見えない時刻が存在するとは思えません。あるウエブのサイトでは、アニメーションで見える衛星の色を変えていますが、常に何機かは、日本から見えています。

2.受信側に原子時計を用いることは問題の解決にはなりません。大切なのは、衛星間及び受信側の時刻の同期を取ることです。時刻の絶対値は問題ではありません。衛星の時刻の誤差情報は、米国がモニターしていて、同期をとった時刻信号として地上で受信するGPS信号に含ませているはずです。この時刻管理に日本が割り込むことは考えられません。QZSS の時刻補正を米国にやってもらうわけにも行きません。

3.「QZSS衛星がGPS衛星より天頂に近いとき」が議論されていますが、「GPS衛星の方が天頂に近いとき」もあります。どちらの時間の方が長いのでしょうか。だれか軌道計算でもして、この比較を定量的に見たいものです。

4.「GPSによる測地計測の精度」という観点から言うと、天頂にちかい衛星からの信号ではなく、仰角の小さい衛星からの信号が、誤差の最大要因ではないでしょうか。所詮は10個近い衛星の信号から、方程式を解くのですから、誤差の大きい信号が、計算結果の誤差を支配するように思えます。実際、GPS受信機のソフトには、仰角を指定して、ある角度以上の仰角の衛星のみデータ処理の対象とする、というのがあるようです。

以上、素人考えをめぐらしました。
またご教示ください。
MAJIM
2010年10月05日 01:15
すみません,前回コメントの「日本の上空に衛星がいない時間帯」は不正確な表現なので,間違いですね。正しくは,「受信機側から見て上空に衛星が見えない時間帯が生じる」です。これは,米国GPS衛星の軌道の場合で,山間部や高層ビル街で起こる現象です。1日に2時間半程度だそうです。

みちびきは8の字軌道なので,JAXAによると1日8時間程は日本の準天頂を飛行しているそうです。そういう軌道で複数の衛星が錯綜するのはさぞかし大変だと思います。

なお,JAXAでは7基で米国GPS衛星に頼らず日本周辺の測位が可能になると考えているようです。

その場合,遠隔地の島嶼部から200海里の海域の船舶での利用は勘定に入っているのかどうか,確認できませんでした。

2010年10月06日 20:32
MAJIM さま、
再度のコメントありがとうございます。
1.「日本独自のGPSシステムを7機のQZSSで構成する」という計画は検討に値すると考えます。10年もすると、そういう時代になるのではないでしょうか。
2.ただし、小生の現在の勉強状況からは、GPSを使うより、Differential GPSを使ったほうが測地精度が良くなるように思います。
3.日本独自のGPSを持つか、米国頼りのGPSでガマンするか、どちらを取るかは、冷静な化学的議論の上に立った、政治的決断だと思います。
今後ともよろしく。
nomonomonomo

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