大気圏再突入のさせ方。流体力学のお勉強。(その17)

「はやぶさ」が帰還してニュースになった。そこで、大気圏再突入のさせ方について説明しよう。

「大気圏」といっても、大気は、高度が上昇するにつれ、連続的に密度を下がる。どこから「大気圏」か、厳密に定義できないが、簡易的に、高度120キロメートルの地点としよう。ここで、「大気再突入」を開始するとしよう。

機体の条件としては、機体の速さ(対地球)、飛行方向、そして揚力を持っているか否か(翼があるかそれとも単に抵抗しか発生しない形状か)が関係する。

1.宇宙空間から高度120キロメートルまで近づいてくる間に、速さを落としておけば良い。しかし、宇宙空間での逆噴射は効率的ではない。当然、大気に突っ込んだ後では、大気による空気抵抗が利用できるわけだから、これをうまく使おう。

2.また、大気に突入する速度は、月や小惑星からの帰還のときと、地球周回からの帰還の時ではおおきく異なる。月から帰ってきたアポロ宇宙船では、時速20キロメートルだったが、地球周回のスペースシャトルの帰還時は時速8キロメートル程度である。

3.大気圏への再突入の時、垂直に落ちてくれば隕石のように加速して空力加熱で燃え上がってしまう。したがって、ある程度角度をつけて、斜めに再突入する。しかし、あまり角度が浅すぎると、大気に跳ね返されてしまう。水辺で薄い石を水面に浅い角度で投げると、水面で数回跳ね返されるのが見られる。あれと同じ現象である。実際、アポロ宇宙船の帰還時の設計軌道では数回バウンドする軌道が作られたことがある。(高度が上昇するにつれ空気密度はだんだん薄くなると上で記したが、実際は、バウンド現象が起こる程度に不連続的だ。)

4.「はやぶさ」は揚力を持たない形状だった。すなわち、進行方向の逆向きに空気抵抗は受けるが、進行方向に垂直な方向には力(揚力・横力)が発生しない。そてに対し、スペースシャトルは、その大きな主翼で積極的に揚力を発生させる。この揚力を使うことで、軌道設計の選択肢が増えて、空力加熱を緩和させることができる。

5.抵抗しか発生させない機体形状では、初期条件である、大気圏再突入時の速さと飛行方向(角度)で、その後の軌道のすべてが決まる。自由度はない。しかし、揚力を発生させる機体では、機体の進行方向に対する角度(迎角と横滑り角)を変化させることにより、航空機のように最適な軌道を選ぶことができる。クロス・レンジがかせげることになる。(ただし、滑空飛行するため、抵抗方向は自由度がない。)

というわけで、簡易的には(初期の検討においては)、高度120キロメートルから地上まで、初期条件(速さ、角度)と運用条件(迎角、横滑り角)をいれて、飛行をシミュレートして、最適条件を探すことになる。

(定量的でない議論で分かりにくかったかな。「お勉強」で続編を述べます。)
「はやぶさ」の再突入飛行経路はどうなっているのだろうか。流体力学のお勉強。(その21)
http://44579446.at.webry.info/201008/article_89.html


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大気圏再突入時の加熱現象に関する誤解。流体力学のお勉強。(その15)
http://44579446.at.webry.info/201008/article_19.html

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