FIFAワールドカップ ぶれ球はなぜ起こるか。流体力学のお勉強。(その1)

本田のシュートが無回転でぶれ球だったという。そこで,流体力学のおさらいをしよう。

まず,シュートのボールのレイノルズ数はどのくらいか。(レイノルズ数とは,慣性力の粘性力に対する比。ボールの近傍を流れる境界層の定性的な状態の指数。)高度ゼロにおいては,標準大気表によると,
http://www.pdas.com/refs/us76.pdf

温度=15度C,動粘性係数 n=1.4607*10**(-5) (m**2/sec)
なので,
ボールの速度V =100 (km/h) = 100*1000/60/60 = 27.8 (m/sec)
ボールの直径 L = 22 (cm) = 0.22 (m)
とすると,レイノルズ数は
Re=VL/n=27.8*0.22/1.46*10**5 =4.19*10**5
となる。
境界層理論の教科書

Hermann Schlighting, Boundary-layer Theory, McGraw-Hill 1968
のページ17, Fig.1.5
http://44579446.at.webry.info/201006/article_28.html

によると,レイノルズ数が 2*10**5 から 4*10**5 の間はレイノルズ数の増加に対して抵抗係数が急減(0.4から0.09へ)する領域で,臨界領域critical region と呼ばれる。
すなわち,上の条件では,抵抗激減に見られるような流体力学的不安定現象が現れるのである。

それでは,高度(気圧)の影響はどのくらいあるのだろうか。
標準大気表によると,高度1500mにおいては,
温度=5.252℃,
気圧の高度ゼロに対する比 p/p0 =0.83453,
密度の高度ゼロに対する比 row/row0=0.86376,
動粘性係数の高度ゼロに対する比 n/n0=1.1270
となるので,レイノルズ数は動粘性係数のみが効いて,
Re/Re0=0.887
すなわち,
Re(Z=1500) = 0.887*4.19*10**5 = 3.72*10**5
となる。

多分,ボールの速度や表面状況を考えに入れると,地上におけるレイノルズ数より,高度1500mにおけるレイノルズ数のほうが臨界領域の現象が顕著に現れているのであろう。

これがぶれ球の正体である。
画像

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