ギリシャ語(44) アスペクトについて(15)

これまでは,主として意味論的な用語をもちいて,アスペクトを紹介してきた。
ブスペクトの形式的な表現についてはふれずにおいて,場面の内部構造に言及した。

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ここでかんたんにテンスと比較しておくことは,有益なことだろう。時間の関係づ
けtime reference(絶対的な,あるいは相対的な)という意味論的な概念があっ
こ,それがある言語においては文法化grammaticalizationされている。つまり,
ある言語は,時間の関係づけを表現する,文法的なカテゴリをもっているのであ
る。このようなばあいには,その言語にはテンスがあるといわれる。テンスをかい
ている言語,つまり時間の関係づけを文法化してはいない言語もたくさんある。お
そらく,どの言語でも時間の関係づけは,語彙化することによって,表現すること
ができるのだが。たとえば,どの言語にも,英語のtoday, the year before last,
at five o’clockのような,時間の副詞あるいは副詞句があって,これが場面を時
間のなかに位置づける。アスペクトを論じるばあい,テンスのばあいのような,用
語法上の統一性はかけている。`アスペクトaspect'という用語は,ありうる一般
意味論的な対立をさししめすためにもちいることがある。ところが,いちいちの言
I1仔には,意味的な区別にもとづいて文法化されている,特殊な対立がしばしばみう
けられるのだが,この特殊な対立をさししめすためにだけ,このアスペクトという
用語をもちいることもある1。この本では,たとえば完結相の意味と不完結相の意
味とのあいだの区別だてのような,アスペクト的な意味の区別についてのべるだろ
う。いちいちの言語において,この意味的な区別が文法化されているか,それとも
語彙化されているか,ということについては,とわないでおいて。しかし,ふつう
は`アスペクトaspect'という名詞は,とくにその複数形の`aspects'は,いつで
も,いちいちの言語におげる特殊な文法的なカテゴリをさししめすためにだけ,
もちいるだろう。この文法的なカテゴリが,その内容において,設定したアスペ
クト的な意味の区別だてに対応しているのである。用語法上の問題の,べつの解決
のし方も可能である。それはアスペクトをあつかった,ほかの文献にみることがで
きるだろう。しかし,この本の方針がわかっていただければ,用語法上の混乱をお
こすようなことはないだろう。

Bernard Comrie, Aspect - An Introduction to the Study of Verbal Aspect and Related Problems, Cambridge University Press, 1976, 山田小枝訳, むぎ書房1988。

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